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2023-24シーズン アーセナルのCL再挑戦

チャンピオンズリーグがやってきた

2023-24シーズン、ついに6シーズンぶりにアーセナルチャンピオンズリーグに戻ってきた。やったー!ロック様曰く的に言うと「Finally, The Arsenal has come back to "Home"」ということだ。

ロック様も2024年復帰するのだとか

長年のグーナーにとってみては、実に20年近く誇張なしに「出るのが当たり前」「気づいたら出ていた」「出たと思ったらバルサに敗退させられていた」「メッシには惻隠の情というものがない。三木武夫か」という、思わずtkqさん文体になってしまう大会だったので、失ってわかるありがたみや喪失感というものに、臍を噛むこの6年であった。ありがとうアルテタ!

 

 

さて、無事にグループリーグを突破したのち、決勝トーナメント初戦のポルトに負けた直後の変なタイミングではあるが、ここでヴェンゲルさん時代の戦歴を振り返ってみる。

 

ヴェンゲルアーセナルチャンピオンズリーグ

偉大なるヴェンゲル爺さん
  • CLには19シーズン連続で出場している。すごい!プレミアでこれは最長不倒になるのではないか。クロップリヴァプールは8年で終了するみたいだし(おつかれさまでした)、グアルディオラもさすがにシティで20年はやらないだろう。フットボール人生で残るトロフィー、ナショナルチームの欲も出るのでは。
  • 案外ファーガソンマンUでも、連続出場は1996-1997シーズンから2013-2014シーズンの18シーズンだ(とは言えそのうち2回優勝して2回準優勝だから結果は圧倒的な差があるがw)。
  • 繰り返しになるが、ヴェンゲルさんは1996-1997年に就任してから、そのあと1998-1999以降2016-2017シーズンまで19回連続でCLに出続けたのであった。すごい!というかしぶとい!毎年、今年は怪我人多いしヤバいんじゃないか?と追いつめられてから、サボり癖のある有能な会社員が自身に課されたノルマの辻褄を合わせるように、終わる頃にはあら不思議、4位以内に滑り込んでいたのだった。名人芸である。
  • しかし1996とかのあたりってプレミアからCLストレートインは1チームだけだったのに、時代は変わるものである。というか、PLは市場価値の成長度がエグい。スペインのリーガや、イタリアのセリエAと比べて放映権の分配が公平だから説を読んだことがある。多分いろいろなことに当てはまることなのではないか。日本経済も(Jリーグの話ではない)、格差を弱めて極力公平な所得にするというか、所得の中央値を上げるようにすると、経済活動が活発になって全体のパイが大きくなるのではなかろうか、と思ったりする。だって年収500万の人が車を1台持って食費を月5万、家電とか消費財を年20万、サブスク月5千円使うと仮置きして、年収1億の人が車20台持って食費を月100万、消費財年400万、サブスク月10万とか使うかな?CDや本やティッシュや洗剤を20倍買う?与えられた時間は同じなのに?ということで、極端な例外値を除外すれば所得は消費活動と比例せずに絶対に漸減カーブになってると思う。ピケティ先生の話じゃあないが投資に回っちゃうよね。中間層を増やすことの重要性。
  • ヴェンゲルさんに話を戻すと、CLで戦った19シーズンのうち、2003-2004シーズンから最後の2016-2017シーズンまで、なんと14シーズン連続でグループリーグを突破して決勝トーナメントに進んでいる。これも名人芸である。ヴェンゲルマジック。

14年連続決勝トーナメント行き
  • しかし、その14回中9回は、トーナメント初戦のベスト16で敗退させられており、そしてその敗退した9回のうち、6回はバルサバイエルン相手で、圧倒的に戦績が悪かった。天敵とは彼らのことである。そんな敬虔なグーナーの民の祈りを見たグーナー神が嘆き怒り、バルサを破産させたもうらしい。神は言われた。「バルトメウ社長~コウチーニョをたった1億4千万€で買ってきてあげたのねん~」「社長~グリーズマンもたった1億2千万€で買ってきてあげたのねん~」。アーメン。次はバイエルンに裁きを。これがグーナー黙示録である。「2月ですぞ~」
  • それにしてもアーセナルは、決勝トーナメントに進むこと14回中6回、グループリーグを必死に勝ち抜いたと思ったら、その後実に43%もの確率で、バルサバイエルンどちらかとの対戦を強いられ、敗北し続けたのであった。エンカウント率のバグとしか言いようがない。
  • でも、もしかしたら俺の印象が偏ってるだけかな?個人の主観印象と客観的な事実は案外違うって「ファクトフルネス」にも書いてあったしな、案外言うてバイエルンバルサにも善戦してたような気がするなと思い、天敵2チームとの決勝トーナメントでの戦績をまとめてみるとこうなりました。
     対バイエルン 8戦 2勝1分5敗 得点8 失点19 4度対戦4度敗退
     対バルセロナ 7戦 1勝1分5敗 得点8 失点17 4度対戦4度敗退
    どう見ても、二度見しても、忘れたフリして見直しても、悲しいかなそれは完全なカモであった。そういえばアンリやセスクを取られて、アーセナルバルセロナの下部組織とまでも言われてたのを思い出して腹がたってきた。それ言ってた奴もグーナー神の裁きに遭って桃鉄で毎回ビリになりますように(でも給与が渋いアーセナルが悪い)。
  • 今に残る印象もそうだが、改めて歴史を振り返ってみても、かの高名で美しく赤きヴェンゲルボールは、その都度、ゲームチェンジャー・メッシ時代のバルサ、暴力的なまでに屈強であり続けるバイエルンには通用せずに敗れてきた。ヴェンゲルさんがよくも悪くも芸術肌なのかロマン派というか印象派白樺派か知らないが、戦術的にはどこか放任的で、オラオラ系のヤカラ彼氏のように相手をあまりリスペクトすることなく、対策がそれほど緻密ではなかったせいだろう。当たって砕けろ、案ずるより産むがやすし、至誠天に通ず、趙雲子龍は満身これ胆であるを地で行く、そんな愚かで美しく清貧なヴェンゲルアーセナルを多くのグーナーは愛したのだった。
  • 一方、ノエル・ギャラガーマネーゲーム化するPLの状況について問われると「皆が車にガソリン入れるとシティが強くなるんだろ?最高じゃねぇか」と斬新な論理を開陳していた。

これぞリスペクトな一枚

 

スーパーミケルアルテタ

これはただのイケメン、just do ikemen

刀折れ矢尽き、体力の限界!気力もなくなりヴェンゲル千代の富士は遂に退任し、後任のエメリもアーセナルをCLに戻すことはかなわなかった。

そしてシティからやってきてくれたのがミスター問答無用こと、ミケル・”ノンネゴシエイタブル”・アルテタである。交渉人ではない。非交渉人である。そんな職業の人いてたまるか。ノースロンドン切り捨て御免。素行の悪い奴はフランスにローンという名の片道切符で切り捨て御免。

そんなアルテタは1年目2年目とPLでは結局8位に終わって、さすがにヴェンゲルさんほどのロケットスタートとはいかなかったが、初のトップチームコーチということで初々しく、なんだかんだ毎年成長がみられるところがよかった。アーセナルサポーターは偉大なるヴェンゲルさんの影響というか影を追ってしまうというか、短期的な結果で一喜一憂とっかえひっかえしたいわけではなく、長期的にチームを任せられるような人を望んでる人が多かった気がする。それが幸いした。

エメリ時代末期にボロボロだった守備(なんかカウンター志向ということで毎試合20本以上シュートを食らいに食らうノーガードサンドバックな有様で、オーバは生き生きしてキャリアハイの決定力を見せつけていたが、スタッツが見てられなかった)を、ダビド・ルイス、ムスタフィ、チェンバース、コラシナツという、書いてるだけで目まいがしてくる頼もしい面子しかいない状態にも関わらず応急処置で立て直したのは見事だった。その、炎上プロジェクトを鎮火する様子は新生FF14吉田直樹氏に見えた。

それからも3年ぐらいかけてゲンドゥージ、エジル、オーバといった実績のある問題児な自由主義者たちを徐々に構想外に追いやり、ウィリアンやセバージョス、タヴァレス、パブロ・マリといった失敗というか見込み違いというか、とにかくそういうそんなはずじゃなかった、サクラチェッカーで調べてから買えばよかったみたいな獲得事例を経て教訓を少しずつ得て、また、ティアニーやレノ、ベジェリン、ラカ、AMN、ウィロック、ロブホ、あるいはペペといった、いい選手なんだけど構想に合わなかったり、どうしてもトップオブトップにはあと一歩感のある選手だったり、いつか覚醒して高い値がつくかもなあ的サンクコスト塩漬けな選手を容赦なく損切りした。

その一方、大ヒットではあるトーマス・パーティが思いのほか、乗り心地は最高なのだが1年で3ヵ月乗ると故障する、年中整備が必要な大変貴重なロールスロイスであることがわかると、御眼鏡に適うだけの超高品質かつ人間性やロイヤルティも申し分ない品行方正なヤングプロスペクトたちを少しずつ揃えて、自由な校風から規律ある集団へとオーバーホールした。

ネグレクトによる物別れ一歩手前に見えたサリバは必殺の説得工作でしっかりキープして、いまやネクストVVDで大変ありがたいテキーラである。ライスだってウェストハムとの獲得交渉は難航して、いつものようにシティかチェルシーかに天然成分由来のパワーハイジャックされるんだろうなあと思っていたら、アルテタが大往生流奥義「説得」のヘッドショット一撃で、無事に獲得に至ったのであった。安心してください。非交渉人は交渉人でもあったのだ。

そうやって少しずつ高価な持ち駒を揃えて(サカやマルティネッリみたいな、タダみたいな状態から高騰し倒す変な仮想通貨みたいな大覚醒選手にも恵まれた)、ついには就任当初の堅守だけではなく、ペップシティ、クロップリヴァプールとも互角に与する耐プレス、ポゼッション性能、カウンタープレスを備えてチャンスクリエイトもできる、攻撃も魅力的なチームに育て上げた(波はある)。地味な堅守からセットプレイで沈める嫌らしい戦い方もできる。

サポートするエドゥ、クロエンケファミリーの功績も当然大だが、振り返るとベストのタイミングで就任してくれたのではないだろうか。

 

そんなアルテタはまだ若いと思っていたが、現代の名監督のCL初優勝時の年齢を調べてみた。

 

監督 チーム シーズン 年齢
ペップ バルセロナ 2008-2009 38歳
モウリーニョ ポルト 2003-2004 41歳
アンチェロッティ ミラン 2002-2003 44歳

 

アルテタは今年42歳だが、実績を残し続けたスーパー監督って案外それぐらいの年齢からスーパーであり続けたんだな。ともあれアルテタもこれから20年は指揮をとってほしいものだ。そしていつかアーセナルに悲願のCL優勝をもたらしてほしい。とりあえずその前にバルサバイエルンに借りを返したってほしい。クロップリヴァプール、ペップシティを破ったアルテタならできるはずだ。モウリーニョとも戦う機会がまたあればいいのだが。

ヴェンゲル・ファーガソン時代より、いまの方がというか、いまのPLが異常に過酷な競争性があるし、そんな中でコーチとして成長して結果を残したアルテタは大したもんだと思う。昨シーズンは大躍進で2位となったが、正直今シーズンはアルテタ初のCL挑戦を兼ねるシーズンなわけだし、チームマネジメントに苦労してもっとフォーム崩す可能性もあると思っていた。でもシーズン折り返しでまだ2年連続優勝争いをできている。

言うまでもなくアカウンタビリティ・人格にも立派なものがあるし、これから先もし多少成績が下がることがあろうとも、ヴェンゲルチルドレンの一人として、アーセナルで末永くがんばってほしいなあと思った。